ドッグレスキューしおんの会🐕   

北海道の浜中町内で野犬が産んだ仔犬が野生化しないよう保護し、飼い主になってくださるご家族へ譲渡するボランティア活動をしています。

『ワンワンワン』……絵本のご紹介

先日、絵本を購入しました
捨て犬だった子たちの3つのストーリー
その中の1つ「名無し」の物語と作者のさかざきちはるさんのあとがき(抜粋)をご紹介いたします


ぼくの名前はなんだろう

昔は名前があった
でも もう忘れてしまった
誰もぼくのことを呼ばないから

みんな 忙しい
エサを置く人
通りすぎるだけの人

春も 夏も 秋も 冬も
晴れた日も 雨の日も 雪の日も

誰もぼくを見ず
誰もぼくを呼ばず
誰もぼくに触れないで
ぼくは だんだん透明になっていく

ぼくはここにいる
ぼくはここにいる
ぼくはここにいる

「一日中吠えているのでご近所から苦情がきまして……もう うちでは飼えないんですよ」

「ここから出して」
「こわいよ」
「さみしい さみしい」
「お母さーん」
「こんなところ嫌だよぉ」
「出せ 出せ 出せ」
「お願い 迎えに来て」

他の犬は悲しいと泣いていたけど
ぼくは何も感じなかった
ぼくは心まで透明になってしまったんだ

そこにあの子が現れた
オリの前に立ち止まり「あの犬がいい」と言った
施設の人も母親も違う犬をすすめたけど「あの犬がいい」と言ってきかなかった

あの子はぼくを見ていた
あの子にはぼくが見えるんだ
ぼくは不思議でたまらない

ぼくは透明になって何も感じなくなったはずなのに
あの子が抱きしめてくれたとき
しっぽがぱたぱたと動いてしまったんだ

そしてあの子はぼくの名前を呼んだ

ワンワンワン
あの子の呼ぶ声にぼくは答える
答えるたびに心に色がついていく

ワンワンワン
ぼくはもう透明じゃない


〔あとがき〕
生きていて、あったかくて、喜んだり、甘えたり、さみしがったりする存在が、飽きたから、飼いきれなくなったから、増えすぎたから、売れ残ったから、と人間側の都合で、ゴミのように「処分」されていることにショックを受けました。

今回、捨て犬たちの絵本をつくるにあたって、この悲しい現実をどのように表現すればいいのか迷いました。絵を描いているうちに、チビやリリィや名無しのことが愛おしくなってきて、どうしても可哀想な結末にすることが出来ませんでした。

現実はきっとこんなに甘くない。でも何も出来ないとあきらめてしまうのではなく、望めば未来は変化していくと信じたい。
人と犬が共に暮らしてお互いを幸福にする、そんな未来になりますように。

現実の世界の犬たちに、優しい手が少しでも多くさしのべられることを願っています。


写真5枚目…昨年7月に根室保健所から保護しケア中の幸吉
人を咬んだと飼い主が持ち込んだとのことです