霧多布湿原の保全活動をしている認定NPO法人霧多布ナショナルトラストの会報に依頼され
浜中町に自生する植物についてエッセイを書いています
今回はこれから花が咲くエゾヤマザクラを書きました
「願はくは 花のもとにて 春死なむ その如月の 望月の頃」
この歌は、平安時代の僧侶で歌人の西行(さいぎょう)が詠んだ歌です。できることなら、2月の満月ごろの春に、満開の桜の下で逝きたいという歌で、そう願ったとおりに、西行は息をひきとりました。
昔から桜は日本人の心を魅了し、愛されている花ですね。本州で多く見られるソメイヨシノは、花だけが一斉に咲いたあとで葉が出てきますが、北海道に自生するエゾヤマザクラは、花と一緒に赤っぽい葉が付きます。
ソメイヨシノに比べて華やかさに欠けるかもしれませんが、私は凛とした風情のエゾヤマザクラが好きです。
丸山散布(まるやまちりっぷ)に住んでいた頃、裏山のゆるやかな斜面に、佇むように立っていた一本の桜と出会い、「そろそろ花は咲いたかな?」と楽しみにして通いました。
あまり大きな木では無く、花数は少なかったですが、一輪一輪の花の色が濃く、花が咲いているのが、遠くからでもはっきりと分かりました。
茶内に引っ越して15年が立ちましたが、この原稿を書きながら、久しぶりにあの桜に会いに行きたいと思っています。
命あるものは必ず死にますが、西行のように願いが叶うならば、エゾノウワミズザクラの下に眠っている大好きな犬たちのもとに、私は逝きたいと望んでいます。
5月7日 代表*福澤